地域包括ケアシステム強化法と「我が事・丸ごと」

2018年10月28日 21時07分 | カテゴリー: 子育て・子育ち・女性, 生活困窮者支援・若者支援・働き方, 高齢者、障がい児・者福祉

今、地域で起きていることへの心配
 子供食堂や居場所事業に注目が集まり、NPOの中には介護保険制度の地域支援事業をもっと活用して、子ども・若者・困窮者も集える場づくり等に活用したいとの意見や、国が進める「我が事・丸ごと」地域共生社会、共生型サービスへの期待の声も聞こえてきます。

 でも、介護保険制度における要支援者への給付を削った財源でボランテイア等を活用して事業を構想すること(居場所や訪問、移動サービスなど)にまず違和感があります。また、それらは「事業」として実施されるわけですから、自治体は予算を超えて実施しない(しなくても良い)ということも起こり得るわけで危機感も抱いています。

 とはいえ、2018年度の介護保険制度改定のベースとなった「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(以下、「地域包括ケアシステム強化法」)により、社会福祉法も改正、「地域共生社会」の実現に向けた地域づくりが掲げられ、モデル事業も始まっています。
 そこで、新たな法制度のもとで進められる事業について、10月22日、大河原まさこ衆議院議員のコーディネートで、厚生労働省社会・援護局地域福祉課にヒアリングさせてもらいました。

まず、改正社会福祉法の概要から。

(リンクの資料と当日資料は若干文言が異なります。「我が事・丸ごと」というトーンが抑えられているようです)

〜「地域住民や福祉関係者(事業者、ボランティア)が、本人のみならず世帯全体に着目して、福祉、介護、保健医療に限らない、地域社会からの孤立も含めた「地域生活課題」を把握し、支援関係機関と連携し、課題の解決をを図るように留意する。」(第4条)地域子育て支援拠点や地域包括支援センター、障害者相談支援事業所など福祉の各分野における相談支援事業者が、自らが解決に資する支援を行うことが困難な地域生活課題を把握した場合には、必要に応じて支援関係機関につなぐことを努力義務化(第106条の2)こうした地域福祉を推進する上で自治体に対して、「支援体制の整備」を努力義務化(第5条、第6条、第106)〜

と言ったことが書かれていますが、改正法のベースにあるのは「住民主体の課題解決力の強化」で、丸投げの批判も起こってしまうわけですね。

「我が事・丸ごと」の流れも辿ってみます。
2015年 厚労省「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチーム」設置→方向性「サービスを効果的・効率的に提供するための生産性の向上」
2016年6月ニッポン一億総活躍プラン
2016年10月〜地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)
2017年2月『地域共生社会』の実現に向けて(当面の改革工程)策定

2017年9月  地域力強化検討会最終報告
2017年4月「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」可決・成立→介護保険法をはじめとして、老人福祉法、医療法、児童福祉法、高齢者虐待防止法など31本の法改正を束ねる。(政令事項204,省令574)
(厚生労働省『地域共生社会」の実現に向けて』などより抜粋)

地域包括ケアシステム強化法のもとで
すでに、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法の3つの法律に共通の内容を盛り込んだ共生型サービスが創設され、地域力強化推進事業などのモデル事業も推進されています。また、厚生労働省は、自治体に宛て、「介護保険制度の地域支援事業、障害者総合支援制度の地域生活支援事業、子ども・子育て支援制度の地域子育て支援拠点事業、健康増進法に基づく健康増進事業などを複数の事業を連携して一体的に実施することができる。その実施に要する総費用を事業間で合理的な方法により按分することができる。」などの内容の通知を発出しています。

考えなければならない問題点
 私は、ヒアリングの席上でも発言しましたが、地域福祉の領域を拡大すること自体に異論がある訳ではありません。ただ、地域包括ケアシステムという名の下に、複合化・複雑化した課題の解決を介護保険制度(地域支援事業)に寄せていく流れはやっぱり納得できません。高齢者の課題は、厚労省があげているような多岐にわたる課題の中の一部。総合的な相談支援体制づくりをめざすならば、生活困窮者自立支援制度を軸に考えていくべきではないでしょうか。
 モデル事業の事例として取り上げられた豊中市のコミュニティーソーシャルワーカーのような、ソーシャルスキルを持った専門職の育成を進めていくことも必要だと思います。
 私も、子育て・介護に関わる事業を展開する中でソーシャルワークの重要性をひしひしと感じ、他機関との連携を模索する日々です。総合的な相談支援体制づくりの軸にあげた生活困窮者自立支援制度も子育て支援や介護事業者に十分認知されているという状況ではありません。多くの事業者が次から次へと打ち上げられる構想に追いつけない状況にあるのではないでしょうか。

実践の裏付けを持って
 2017年の
地域包括ケアシステム強化法案の審議の際には、衆議院厚労委員会冒頭で、森友問題に言及されたことを理由に、与党は法案審議を打ち切り採決に及んだという経過もありました。地域・現場と乖離した議論をどう引き寄せられるのか。実に困難な状況ですが、当事者を目の前にして諦めるわけにはいきません。

 2015年から、NPO法人ワーカーズコレクティブ協会(W.Co協会)と、生活困窮者自立支援制度における就労準備支援事業を中心に共同調査を進めていますが、今年度ピックアップしたテーマは「居場所」。W.Co協会自ら居場所も立ち上げ、間も無く開所予定です。実践の裏付けを持って必要な政策・制度を提案できるよう走りながら考えていきます。