スタートから1年「生活困窮者自立支援制度」の実施状況は?

2016年6月9日 07時03分 | カテゴリー: 生活困窮者支援・若者支援・働き方

生活困窮者自立支援制度が本格的にスタートして一年。6月6日には、市民がつくる政策制度調査会のコーディネートで、生活困窮者自立支援制度の実施状況について、厚労省(社会・援護局地域福祉課、生活困窮者自立支援室)の話を聞く機会を得ました。地域の状況や、各自治体の制度の運用状況も見えない中で、一概に「数字」だけで評価はできるものではありませんが、気付いたことを記します。

まず、この制度の必須事業で自立支援の入口となる相談の件数(新規)の2015年度実績は約22,6万件。そのうち約5,6万件の支援プランが作成され、その結果、約2,1万人が就労、約7000人が増収に繋がったと報告されています。(神奈川、横浜の状況は以下の通りです。)スクリーンショット 2016-06-09 6.52.45
10万人あたりの実績で見ると、神奈川県は他都道府県に比べて少なめ。横浜市は相談件数やプラン作成件数においては指定都市の水準をやや下回るものの、就労支援の分野で善戦しています。

任意事業については「就労準備支援」「一時生活支援」「家計相談支援」「子どもの学習支援」の4つの事業に取組む自治体数がそれぞれ増加しています。2016年度も増加を見込んでいます。意外だったのは「子どもの学習支援事業」。昨年、神奈川県内自治体の取組状況を調査した際に、「学習支援」にウェイトを置いた取組みが多かったと記憶していますが、全国的に見ると「居場所の提供型」(48,5%)や「養育支援型」(32,1%)の事業も一定程度実施されていることがわかりました。あらためて難しいなあと思ったのは「就労訓練事業」。スクリーンショット 2016-06-08 23.45.08この事業は、一般就労の手前のステップとして、中間的・訓練的な就労を行うもので、都道府県や指定都市が事業者を認定します。2015年度の認定件数は全国で484件(認定あり74自治体の内訳: 34都道府県、14政令市、26中核市)で利用定員合計は1,416人ですが、受け入れ実績は全国で161人という少なさ。私が関わっているNPOの事業所も横浜市の認定就労訓練事業所となりましたが、受け入れ要請はありませんでした。でも、決してニーズがないわけではなく、地域で引きこもり支を行う援団の紹介で、現在2人の若者の就労訓練を行っています。ちなみに、横浜市は14の就労訓練事業所を認定していますが、神奈川県の認定事業所は「ゼロ」。これは、なんとかしないといけないのでは。

県の役割「広域連携」の事業展開についても考えさせられました。ヒアリングに参加されたホームレス支援やシェルター事業をされている県内事業所は「一時生活支援事業は、広域連携で進めたほうがいい」と指摘されていました。神奈川県のホームレス対策として実施されてきた事業が、生活困窮者自立支援法の「一時生活支援事業」に形を変えて、市町村の任意事業として位置づけられたことで、県はホームレス対策事業から手を引いてしまいました。市町村も任意事業で手をあげない→公的補助が無くなった→ニーズはある→事業所持ち出しで事業を実施、というような状態になっているそう。もちろん県が任意事業を実施することも可能で、愛媛県のように県として県内一円を対象に一時生活支援事業を実施している事例もあります。自治体連携の動きは、基礎自治体よりも、広域自治体である都道府県の側がイニシアティブを取る方がより進みやすいはずです。生活困窮者自立支援モデル事業の実施の際にも、繰り返し提言してきたことなのですが、神奈川県はギアチェンジが必要だと思います。
厚生労働省としては、事例を積み上げ、今後、困窮者自立支援制度の事業評価のあり方を考えていこうという段階のようです。手探りで事業に手探りで取組む自治体にフィードバックしてほしい情報もたくさんありそうです。「ワンストップサービス」を掲げ、「さまざまな施策にヨコグシをさす」とか、「クロスファンクションで」とか言われスタートした生活困窮者支援。必ずしも機能してこなかった従来の支援スキームを新たな制度の中でどのように修正していくのか、新たな制度が「新たなすき間」を作ってはいないか?ということも含めて検証してみることが必要だと思います。