ソウルスタディツアー報告4「地域発展のためのガバナンスについて」

2014年7月18日 01時31分 | カテゴリー: アジア・NPO/市民社会・平和, 生活困窮者支援・若者支援・働き方

 ギルダム書院にて、チャン・ゴンファン氏をお招きし、ソウルスタディツアーのまとめの時間を持ちました。
 韓国では、社会的企業育成法や協同組合基本法が相次いで施行され、ソウル市でも協同組合活性化支援条例や参与予算制運営条例を制定し、市民社会の力をまちづくりに生かしながら共生社会をめざすという流れがあります。市民活動の現場では、パク市長に対する大きな期待を感じました。民主化運動を経験した方たちの運動をベースとし、生協や大学、区の職員も積極的に参加し協働するモデルを見る事もできました。

 チャン・ゴンファン氏からは、ソウルの新たなまちづくりを牽引する東北4区(*1)の地域・住民発の自発的な地域発展のための様々な協働についても伺いました。東北4区は、自然環境に恵まれ、大学が集まる文教地区で、草の根市民活動も活発に展開されています。パク市長と親和性のある革新派区長がそろって誕生したことで、ソウル市の支援も受け、官・民が連携で住民参加型のまちづくりが模索されています。昨年6月には、4区長と市民団体による協議会も発足し、地域の発展・協力のために努力するとの協定が交わされています。
 今年6月の市長選挙では、パク市長が再選され、引き続きパク氏の掲げるまちづくりが進められることになりました。しかし、市長選、区長選などの選挙結果によっては、政策が揺らぐこともあり、政策の一貫性をどのように担保するのかは課題です。パク市長に対して次期大統領候補者にとの期待の声もあり、それもある意味懸念材料となっているようです。2014年度統一地方選挙において、ドボン区では、国政党の比例区候補として福祉現場のリーダー(女性)が当選を果たしていますが、市民政治を志す多くの女性候補が落選していました。

 私たちがソウルで見たいくつかのモデルは100万都市ソウルのごく一部かも知れません。一部の階層の人たちの活動かも知れません。
 日本によく似た介護保険制度は2008年に始まったそうですが、セーフティネットとして十分機能しているとは言いがたく課題も多いとの指摘もありました。日中、地下鉄の構内や公園で時間を過ごす多くの高齢者の姿がありました。孤立化しがちな子育て世代の問題や、働けない若者の課題なども聞かれ、日本の状況に重なりました。また、住民運動やまちづくりを牽引してきたリーダー層と、貧困層など困難を抱える当事者とのつながりについても課題があると認識されていました。

ギルダム書院

 首長の力で変化を作り出すことは否定しませんが、市民一人一人から出発する自治のあり方や、市民の合意で首長や行政を動かしていくプロセスも重要です。
それらを踏まえた上で、様々な取組みの持続性を担保するために制度化を進めていく必要があると思います。地域社会の合意をつくる場として、自治体議会への市民参加も進め、市民が議会をコントロールすることが、根っこの部分からの変革につながると考えます。目に見える変化が生まれているソウルのまちづくりに触れ、あらためて市民が自治するまちづくりを考える貴重なスタディツアーとなりました。

 *1  ソウル市東北地域にあるドボン(道峰)区、ソンブク(城北)区、ガンブク(江北)区、ノウォン(蘆原)区の4区・人口180万人のエリアは、旧都市部で歴史のある地域です。ガンナム(漢川の南の新都市部)と比較すると経済活動は低調で、就職率も低く貧困率が高い傾向にあります。

ギルダム書院
書院を開かれたパク・ソンジュン先生は、民主化運動をくぐり抜け、豊かさを手にしたその先のもう一段階深い学びの必要性を説かれました。パク先生ご自身の学びの姿勢からギルダム書院のめざすとことが伝わってきます。書院の一角にはギャラリーがあり、その小窓の向こうには古民家のある景色が望めました。かつて、書院がない小さな田舎町のあちこちに寺子屋のような場所あったそうですが、書院にも寺子屋を現代版にアレンジした小さな勉強部屋とキッチンがあり、夜遅くまで学べる空間になっています。音楽会や映画会、講演会にも多くの人が集まるそうです。文化と芸術の拠点として人々を引きつけています。