事業委託費1,890万円「リニア中央新幹線検討調査委託」の中味は?

2012年9月27日 09時18分 | カテゴリー: 活動報告, 県政レポート, 鉄道

リニア中央新幹線神奈川県駅について、「ただ駅を作れば良いというものではない、降りたくなる駅にしなきゃだめだ」というのが知事の持論。今日も、そのように簡潔に答弁されました。私は、降りたくなる駅に降りる「ひと」の問題、すなわち人口減少社会への考察や、降りたくなる駅にむけて、県や地元市はどれだけ投資することになるのか?といった問題意識を持って「リニア中央新幹線検討調査」の結果について伺ったつもりです。昨年、検討調査のための予算が計上された際にも、社会的要請にもとづく検討・調査をすべきと討論を行いました。県としては、東日本大震災の影響で2010年の国勢調査の集計が遅れたために、2005年の国勢調査を基準とした人口フレームしか提示できないという事情があるようですが、この5年間に サブプライムローン問題、リーマンショックを経験し、また、都心部には高層マンションが次々と建てられベッドタウンの変化も加速しました。知事は答弁で、「現段階で使用可能な最新データ」を用いたと発言していますが、この県の所有データおよび、JR東海、中央新幹線小委員会のデータなどをクロスさせた調査結果を踏まえ、以下、質問しました。

三菱総研に業務委託した「リニア中央新幹線検討調査」に基づき、今年3月、リニア中央新幹線神奈川駅設置による県内経済波及効果について、県内生産額を年3千200億円押し上げるとの推計結果が公表されました。しかし、この年間3千200億円に上る経済波及効果に、私は若干の疑問を持っています。

神奈川県の人口は、未だ増加を続け、総人口は推計値を越え907万人に達していますが、すでに2005年から、生産年齢人口の減少が始まり、2010年の国勢調査の確定数でみると、人口に占める年少人口および生産年齢人口の割合は過去最低となっています。一方、65歳以上の老齢人口の割合は予想を超えて増加し過去最高となっています。つまり、総人口は増加したもののその多くが高齢者であり、社会の中で支える人々が増えない中で、支えられる人々は思っていた以上に増えているということです。

県人口のうち4割の人口を抱える横浜市においては、2011年度には 転出超過=人口の社会減が確認されています。人口の減少によって首都圏が収縮し東京に人口が吸い寄せられている可能性も指摘されています。本県において、現時点では、2005年国勢調査を基準とし「2019年を人口ピークとする」推計値が政策展開のベースとされており、本調査も2005年国勢調査を基準とした人口フレームを用いたとされていますが、報告書には神奈川県人口のピークについて「2025年」との記述もあり、明らかな事実誤認があります。

 報告書では、JR東海の計画にそって、大阪開業時点の年間最大乗降客数をリニア新幹線が「橋本」駅に1時間5本停車する条件で1,371万人まで予測しており、交通企画課もこの試算が「最も現実的」としていますが、これはあくまでも「東京―大阪間の航空便が全廃」となるという前提条件のもとでの試算です。JR東海が2010年に公表した「超伝導リニアにおる中央新幹線の実現について」という資料で述べているような「時間短縮による航空機からの移転による増収」が実現し、「東京〜大阪間の輸送シェアが100%に向上する」という見込みにそった試算に重なります。すでに、航空業界には、ロー・コスト・キャリア(L.C.C)が出現し、経費節減に努力する企業にとっては魅力的な存在になりつつあります。交通手段の選択のパラメーターとなる所要時間についても、神奈川県庁〜大阪府庁間としてリニア駅までのアクセス・イグレスも入れて試算すると、東海道新幹線198分、中央新幹線各駅停車型196分と、ほとんど差がありません。スピードアップに対応した運賃・料金アップをかかげる中央新幹線ですが、L・C・Cに対する競争力も大変疑問であります。

 国立社会保障・人口問題研究所は、東京⇒大阪の全線開業が予定されている2045には、現在1億2千700万人の日本の人口が2割減少し1億2百万人となると推計しています。しかし、中央新幹線小委員会に示された需要予測は、2045年において中央新幹線が整備されていない場合でも東海道新幹線の輸送需要が現状よりも1割増加し、中央新幹線が整備された場合には5割増加するという大変ハッピーな試算となっています。

今回の検討調査において、リニア中央新幹線神奈川駅を橋本駅と 仮定した場合の、駅及び駅周辺の整備の概算事業費については、 197億円と試算されています。さらに、駅前にある相原高校の移転が必要になった場合の補償額として約200億円、高圧線対策が必要な場合はさらに100億円の補償費も必要となることが積算されていますが、これらについては誰が負担するのか明らかになっていません。

リニア中央新幹線計画は1962年に研究がスタートし、半世紀を経た2011年に整備計画が決定しましたが、この間の社会情勢の変化に対する認識が、大きくズレているのではないでしょうか。住民に過度の期待を抱かせていないでしょうか。知事には、住民に知らされていることは本当なのか?幻想を抱いていないか、抱かせていないか?という視点から事業者に対峙していく役割もあるのではないでしょうか。

あらためて、リニア中央新幹線神奈川駅設置による経済波及効果について、知事の見解をうかがいます。